Armin Strom - Mirrored Force Resonance 「共振」とは何でしょう ?

まもなく、ジュネーブにてSIHH(国際高級時計サロン、通称ジュネーブ・サロン)が開催されますが、弊社取扱Armin Strom(アーミン・シュトローム)は、この一大イベントに初出展いたします。
このイベントで発表される新作の情報は15日以降になりますが、昨年末に発表された新作があり、このモデルも実質SIHHで初披露ということになりそうなので、最新情報ということでご案内致します。

そのモデルとは、Mirrored Force Resonance(ミラード・フォース・レゾナンス)のギョーシェ・ダイアル・バージョンです。このモデルのご紹介の前に、Mirrored Force Resonanceとはどんなモデルでしょう ? 


これは、一昨年前に発表されたファースト・モデルです。

その名が示すとおり、Resonance(共振現象)を利用したムーブメントを搭載したモデルです。まず、「共振」ということについて考えてみましょう。

隣接する2つの振動体は互いに影響を及ぼし、やがて同期する - これは「
共振」として知られる物理現象です。

時計史の観点から見ると、こうなります。
クリスティアーン・ホイヘンス(1629-1695)の時代から、時計の同期現象は、時計職人の心を捉えてきました。振り子時計の発明者であるホイヘンスは、別々の2つの振り子時計が共振することを発見した最初の人物です。当初の予測では、少しずれて揺れ続けるはずでした。ところが、同じ梁に掛けられた場合、隣り合う振り子は同期したのです。その後の研究で、振り子が掛かっている木の梁が振動を起こし、共振(レゾナンス)を発生させることが明らかになりました。2つの振り子が、まったく同じ動きをしたのです。18世紀に入ると、アブラアン-ルイ・ブレゲ (1747-1823)が、2つの振り子の共振現象を応用した時計の製作に成功しました。

この動画をみると、それがよくわかります。長さの違う糸に錘がぶら下がっています。ひとつの錘を揺らせると、それと同じ長さの糸についた錘も振動を起こします。


レゾナンスは、きわめて高度で手間のかかる時計製作技術が必要なため、その技術を使いこなすことはもちろん、取り組もうとするメーカーはこれまでほとんどいませんでした。時計としての正確さ、精密さ、歩度の安定性を追求のため、レゾナンスは独立したメインスプリング、ギアトレイン、エスケープメント、バランスを2つずつ使い、それをラック&ピニオンでつないで間隔を微調整します。2つのレギュレーターの間隔を精密に調整するには、レゾナンスを動かすことが不可欠です。2つのバランスは、誤差を平均化して最高の精度を保つために、逆方向に動いて調整されます。

2つのレギュレーターのうち一方が動くことで、周囲に振動を伝えます。それに近い固有振動数を持つもう一方のレギュレーターが振動をキャッチすることで、ひとつ目のエネルギーを吸収し、同じ振動数で共振し始めます。ひとつ目のレギュレーターが「エキサイター(励振器)」として、もう一方が「レゾネーター(共振器)」として機能します。

では、レゾナンスのメリットとは ?

1.動作が安定する
2.パワーを温存できる(プロの自転車競技選手がレース中、別の選手のすぐ隣を走るようなもの)
3.バランススタッフ(テン真)への衝撃など、外的な衝撃による時計の精度への悪影響が減り、歩度の安定性が保たれる

外的な衝撃で一方のバランスが遅れると、遅れた分だけ、もう一方のバランスの速度が上がります。2つのバランスはやがて共振状態に戻り、それによってバランスを調整しながら外的影響を平均化し、最小限に抑えます。
こうした考え方を応用した時計製作はきわめて困難なため、共振現象を使いこなせる時計職人はアンティド・ジャンヴィエ (1751-1855)やアブラアン-ルイ・ブレゲなどごくわずかでした。現代の時計メーカーでも、その数は片手で数えられる程度です。

では、この「共振」という考え方をArmin Strom社がどのようにして、自社開発のムーブメントに取り込んだのか ?

それは、第2部にて。



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